fhána blog
2013/06/19

fhánaの有頂天家族・聖地巡礼記

 

 

 2013年、6月15日の朝、fhánaの四人とマネージャーの木戸氏は京都へ向けて出発した。

 

 京都・南座で催される、アニメ「有頂天家族」のイベントを見るためだ。fhánaはこの作品のエンディング・テーマ「ケセラセラ」を担当している。

 

 京都へ向かう新幹線の中では、僕ことfhánaのリーダーの佐藤純一と、ギターのyuxukiと、木戸氏の三人でLINEバブルに熱中したり、ボーカルのtowanaがお土産屋の位置に大量に印を付けた地図を念入りに確認したり、PCから色々な音を出す担当のケビンがAmazonでのショッピングについて熱弁をふるったり、品川駅で買ったお弁当を食べたり、思い思いのときを過ごした。

 

 しかし、このとき、towanaはまだ知らなかった。ある計画が進行していることを…。

 

 

LINEバブルに興じる三人とケビン

LINEバブルに興じる三人とケビン



 

 

 京都に到着すると、fhánaの四人はお土産を手に入れる為、雨の中忙しく動き回った。ちなみにこの間、木戸氏は別行動をしていた。表向きの理由は、”京都でちょっと人と会う”、ということだが、むろん本当の理由は他にある。

 

 towanaが行きたいと希望した化粧品店、和菓子屋などを巡り、僕はその道中、何故か中古カメラ屋で、RICOH GX100のフルセットを購入したりした。

(僕はGR DIGITAL2とHD動画も撮影出来るCANNONのEOSを持っていたが、EOSは故障中で、GRにいたってはどこかで無くしてしまっていた。だからずっとコンデジが欲しかったのだ。GX100はもうけっこう古いカメラだが、機能的にはまだまだ使える。)

 

 ひと通りお土産屋巡りを終え、僕たちはホテルへ向かった。どういうわけかケビンのテンションが低く口数も減っていたが、これも演技で計画のための布石だ。

 

 

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四条大橋にて


 

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老舗喫茶店”ソワレ”で休憩。青い照明が趣深い。


 

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腐れサブカル大学生・ケビン



 

 

 ホテルに到着すると、すでに木戸氏が待っていた。フロントでカードキーを受け取り、それぞれ部屋に荷物を置きに向かう。その裏で、towanaを除いた四人は、LINEで入念に手筈を確認していた。いよいよ計画決行のときだ。

 

 その計画とは、こういうものだ。ブログに書くには生々しい内容なので、少々ぼかしておく。

 

 6月17日がtowanaの誕生日なので、ホテルで誕生祝いを行う。ついては以下の脚本にしたがって、towanaにサプライズを仕掛ける。

 

「ケビンが、とある粗相を働き、そのことが通報され、つい先程、ケビンの実家とfhánaの所属事務所に警察から連絡が入り、ケビンは出頭しなければならなくなってしまった。今後のことはこれから協議するが、おそらく、有頂天家族のエンディング・テーマのシングルが発売される前に、ケビンはfhánaを脱退することになるだろう。」

 

 縁起でもない話だが、このような設定のもと、まずは木戸氏が「大事な話がある」と、towanaを電話で呼び出し、ケビン出頭および脱退の話しを告げる。そしてケビンが直接謝罪をしたいということで、木戸氏はtowanaを伴ってケビンの部屋へ向かう。ケビンの部屋では、トイレの中に、ケーキを持った僕と、クラッカーを持ったyuxukiが隠れている。ケーキは木戸氏が別行動時に購入しておく。そしてケビンが一芝居打った後、僕とyuxukiはハッピーバースデーと言いながらトイレから出る、という手筈だ。

 

 果たして、towanaが木戸氏に伴われて、ケビンの部屋にやって来た。ケビンは憔悴しきった顔で、微かに震え、今にも泣き出しそうな様子だ。towanaは木戸氏からの説明を完全に信じ込んでおり、深刻な表情をしている。

 

 ケビンが顔をピクピクさせながら謝罪を始めた。

 

「あの……こんなことになってしまって本当に……すみません、上手く喋れなくて……」

 

 トイレに隠れている僕とyuxukiは、笑いを堪えるのに必死だ。間近でケビンの話を聞いている木戸氏の苦労が忍ばれる。何も知らないtowanaだけは、真剣な眼差しでケビンの言葉に耳を傾けていた。

 

 泣きそうになりながらケビンが続ける。

 

「すみません………上手く喋れないんですが、ちゃんと言います………………………………………………………ハッピーバースデー」

 

 その瞬間、トイレのドアを開け放ち、yuxukiがクラッカーを鳴らし、木戸氏とケビンも忍ばせていたクラッカーを鳴らし、僕はケーキを持って部屋に踊り出た。

 あまりにも驚いてtowanaが言葉を失っているなか、ハッピーバースデートゥーユーと、合唱が始まる。歌い終わる頃には、towanaは笑いと安堵の表情の中に涙を浮かべていた。

 

 そしてtowanaは拗ねたような口調で言った。

 

「もーーー……4人でデビュー出来て本当に良かったね……ありがとうございますぅ……」

 

 

 かくして、とわなっち誕生日サプライズ計画は、大成功のうちに幕を閉じたのだった。

 

 

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そしてケビン、この顔である

そしてケビン、この顔である


 

 

 無事計画を遂行し、満足感に包まれながらホテルを後にた僕たちは、八坂神社を訪れたり、恋人たちが均一の間隔で川沿いに並んで座るという、鴨川沿いを散歩したりして過ごした。

 

 このときケビンは八坂神社で縁結びの神に千円ほど投資をしたという。千円の元本保証はないが、後にすごい御利益が発動するかもしれない。

 

 

八坂神社にて

八坂神社にて


 

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撮ってるところを撮っている


 

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某アニメの聖地の楽器屋にも来た


 

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鴨川沿い。本当に均一の間隔でカップルたちが座っている。


 

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熱心に写真を撮るtowana


 

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 夕暮れ時の京都の美しさに目を奪われる。次第に明かりが灯っていく街路を抜けて、僕たちは「モリタ屋四条猪熊本店」に向かった。

 

 

 モリタ屋では、美術作家の大槻香奈さん、謎多きフィクサー・荒木悟氏らとともに、すき焼きを食した。狸鍋ではない。空腹具合も最高のタイミングで、とろけるような霜降り肉をもくもくと頬張り、皆自然と顔がニヤけていた。そんな中、ケビンが得意の話術で場を盛り上げる。

 

 

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 すっかり満腹になった僕たちは、ホテルに戻り、ケビン以外の四人でyuxukiの部屋でトランプに興じた。ケビンは話しすぎて疲れたのか部屋に戻るなり爆睡してしまい、そのまま朝まで目覚めることはなかった。

 トランプはババ抜きの駆け引きで多いに盛り上がった。残りカードが数枚になってから一枚だけ突出させてカードを持ったり、カード三枚を縦一列に並べて持って引かせたりするなど、謎のカードの持ち方を次々と考案し、最終的には残り二枚になったカードのうち一枚をベッドの端に置き、もう一枚を誰かの膝の上に置いて引かせるなど、もはやエスカレートし過ぎて意味不明の様相を呈していた。こうして京都の夜は更けて行った。

 

HMOトランプ

HMOトランプ



 

 

 翌朝、僕たちはホテルに隣接した喫茶店コメダで朝食を取った。

 

 

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京都の朝は何故かコメダで始まる

 

 昨日とはうって変わって晴天の中、レーベルであるL社の佐藤氏(正確にはI社)と合流し、towana希望のお土産屋の金平糖店に寄ったり、鴨川デルタに立ち寄ったりしつつ、一路、下鴨神社を目指した。fhánaのシングルのヒット祈願の為だ。むろん、有頂天家族の聖地でもある。

 

 やたらとおっとりとして動作も喋りも遅い巫女さんによる受付を済ませ、神主さんに祈願をして頂いた。祈願が終わったあと、神主さんから、「ケセラセラっていうのはリバイバルですか!新作ですか!」と声をかけられた。

 towanaが「新作です」と答えると、「そうですか!なるようになるさ〜って意味ですからねえ。上手く行くと良いですねえ!」とお言葉を頂いた。

 ちなみに、一緒に祈願して頂いていた親子含め、この場に”佐藤”が五人はいたという。

 

 

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鴨川にて


 

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下鴨神社



 

 

 下鴨神社を後にした僕たちは、L社佐藤氏のアテンドのもと、先斗町にある「佐曽羅 EAST」のニ階を貸切状態で鴨川を眺めつつランチコースを頂くなど、新人アーティストには贅沢過ぎる時間をすごした。

 L社佐藤氏は、「ケビンくん、美味しいもの食べれて良かったな〜っなんて思ってるだろうけど、元は取らさせて頂くつもりなんで~、結果出して下さいね〜」などと冗談交じりに仰っていたが身の引き締まる思いだ。

 

 

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佐曽羅 EASTの窓際で、みんなで鴨川を見つめるfhánaチーム。yuxukiの首が異様に長い


 

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先斗町にて


 

南座

南座


 

 

 そしていよいよ、有頂天家族のイベントが行われる南座へ向かう。

 

 

 

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 南座は満席で、お客さんのほとんどが女性だ。舞台の下から矢三郎役の櫻井孝宏さんと矢一郎役の諏訪部順一さんがセリで上がって来ると、会場は物凄い歓声というか悲鳴に包まれた。

 矢二郎役の吉野裕行さん、弁天役の能登麻美子さん、矢四郎役の中原麻衣さんも登場してトークが盛り上がり、後半は原作の森見登美彦さん、監督の吉原正行さん、P.A.WORKS代表の堀川憲司さんのトークを興味深く拝聴させて頂いた。皆、浴衣姿が決まっていた。

 

 このイベントで先行上映された第一話は本当に素晴らしく、小説で読んだ世界が鮮やかに色づき、キャラクターたちが動き回り、しゃべりまくり、大変感動した。鴨川沿いや下鴨神社など、つい昨日今日に立ち寄った場所が登場しているのも感慨深い。そして最後には、fhánaが作ったエンディング・テーマ曲「ケセラセラ」が流れ、感無量だった。

 

 

 イベントが大盛況のうちに幕を閉じ、僕たちは喫茶店「カトレヤ」でクリームソーダを飲んで休憩したり、「よーじや本店」でお土産を買ったりしつつ時間を過ごし、打ち上げ会場である、四条大橋西詰「東華菜館」の宴会場へ向かった。

 東華菜館は鴨川を挟んで南座の向かいにあり、有頂天家族では弁天が南座の屋根の上で赤玉先生に会ったあと、この東華菜館の屋上に飛び移る。

 

東華菜館の宴会場の窓から見える南座

東華菜館の宴会場の窓から見える南座


 

 ワイワイと賑やかな打ち上げ会場では、森見登美彦さんを始め、吉原監督、堀川代表、櫻井孝宏さん、諏訪部順一さん、吉野裕行さん、中原麻衣さん、能登麻美子さん、OPのmilktubさんらとご挨拶させて頂いた。

 

 森見さんは独特な空気を纏っていて、こんなことを言って恐縮なのだが僕たちfhánaと同じ系統の匂いを感じた。fhánaは基本的にシャイなのであまり話が盛り上がったというわけではなかったが、なにか心が通じ合ったような感じがした。

 

「fhánaは何だか良いですねえ。謎の四人って感じがしますねえ」森見さんからこんなお言葉も頂いた。

 

 櫻井さんは、なんと、僕が以前FLEETというユニットでエンディング・テーマを担当したアニメ「イノセント・ヴィーナス」にも出演しており、ご一緒するのは二度目だということが判明した。これも何かのご縁なのだろう。

 中原さんは、fhána結成の切っ掛けとなった作品「CLANNAD」のメインヒロインの渚役であり、能登さんは、同じくCLANNADのことみ役でもある。これには一同舞い上がり、とくにケビンが感無量といった様子で積極果敢に会話を試みていた。縁結びの神に投資した千円の御利益がここで発揮されたのかもしれない。

 

 この御目出度い打ち上げの席で、突如、僕もスピーチをすることになった。

「じゃあ、佐藤さん、このあと挨拶お願いしますね!」などと突然言われて、気が動転しそうになったが、打ち上げ出席者の方々は皆とても優しく、僕の拙いスピーチを、温かな雰囲気で多いに盛り上げてくださった。

 

 

 無事スピーチも終わり、気がつけばすっかり日も暮れて宴もたけなわだが、帰りの新幹線の時間が近づいていた。まだ賑やかな会場を後にして、僕たちは慌ただしくタクシーに乗り込んだ。

 南座のイベントと東華菜館の打ち上げの高揚感を胸に抱きながら、だけど僕たちはあまり言葉を交わさず、静かにシートにもたれていた。窓から外を眺めると京都の町の光が艶やかに輝いていた。

 

 

 僕はスピーチの中で、「有頂天家族の家族のように、ぜひ皆様と家族のような絆を築いて行きたい」という話をした。

 fhánaはもともと、メンバー全員がCLANNADという作品のファンであることが切っ掛けで結成された。CLANNADの重要なテーマは家族で、エンディング・テーマ曲は「だんご大家族」という名曲だ。そういういきさつで結成されたfhánaのデビュー曲が、やはり家族の絆が描かれた作品である「有頂天家族」のエンディング・テーマ曲だということに、不思議な縁を感じずにはいられない。

 有頂天家族の下鴨家の狸たちとその仲間たちは、いっけん、バラバラな性格で好き勝手に生きているように見えるが、実は強固な絆で結ばれている。fhánaもそうでありたいし、fhánaに関わってくれる全ての人たちとそういう絆を築いて行きたいと思っている。一個人としてもそういうふうに生きて行れば良いなと思う。

 

 

 そんなことを考えながら周りを見渡すと、towanaも、ケビンも、yuxukiも、木戸氏も、いつの間にか皆眠り込んでいた。僕もさすがに眠気が回ってきた。そうして眠りに落ちた僕たちを乗せて、新幹線は東京へと帰っていった。

 

 

 

 

 「有頂天家族」と、fhánaによるエンディング・テーマ「ケセラセラ」が沢山の人たちから愛されることを祈って。

 

 

2013年6月19日 佐藤純一

 

 

 

 

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佐藤純一